高校入試の時期が近づいてくると、自然と話題に上るのが倍率ではないでしょうか。倍率は志望校を最終決定するひとつの基準となる数字です。しかし、倍率を気にしすぎるあまり、気が進まない公立高校に進学しても意味がありません。高校入試における倍率の意味をしっかり理解し、志望校を最終決定する必要があるのです。
本記事では、高校入試における倍率の意味と発表時期などの違い、倍率を見て志望校を変更する際の注意点を解説します。
目次(クリックで開閉)
・高校の倍率が高い=難易度が高いではない・高校の倍率の見方と種類
┗倍率とは何か
┗募集定員と志願者数
┗合格者数と合格率
┗出願倍率、受験倍率、実質倍率の違い
・群馬県、栃木県、埼玉県の公立高校の倍率(2023年度版)
┗群馬県立高校の倍率
┗栃木県立高校の倍率
┗埼玉県立高校の倍率
・高校の倍率の発表時期
┗出願速報の発表時期の違い
┗群馬県、栃木県、埼玉県の発表時期
・高校の倍率予想と実際の結果
┗予想方法
┗実際の結果との差
・高校の倍率が低い。1.0倍以下だと合格しやすいはウソ
・志望校を変更する際の注意点
┗多くの志願者が志望校変更する可能性がある
┗倍率はあくまでも参考の数字と捉える
┗倍率が若干高くても問題ないと思える実力をつける
高校の倍率が高い=難易度が高いではない
大前提として理解してほしいのが、倍率が高い高校=難易度が高い高校ではない点です。新聞やニュースで公開される倍率とは出願倍率のことであり、定員に対して何人の受験生が志願しているかを示す数字です。言い換えれば、高校のレベルが高いから人気が高くなるわけではないのです。
例えば、定員100名で偏差値が55のA高校と50のB高校があったとします。A高校の志願者が120人の場合、倍率は1.20倍となり不合格者は20人です。一方のB高校の志願者が同時期に105人となっていた場合、出願倍率は1.05倍となり不合格者は5人となります。仮にA高校からB高校へ志願変更を行っても、合格基準点をクリアしていなければ合格できないのです。
年度によって倍率に違いはあるものの、倍率がそのまま難易度にならないことを覚えておきましょう。合格するには、各高校が定める合格基準点をクリアしなければならないのは、倍率の高い低いにかかわらず共通です。
高校の倍率の見方と種類
そもそも、高校の倍率はどのように見ればいいのでしょうか。よく目にするものは出願倍率と呼ばれるものですが、それ以外にも注目しておくべきポイントがあります。倍率の種類と内容を詳しく解説します。
倍率とは何か
倍率とは、募集定員に対し何人の志願者がいるかを数値化したものです。もっとわかりやすく言えば、〇人に1人が合格するという意味です。
例えば倍率が2.0倍ちょうどの場合、受験生の2人の1人が高校に合格するとなります。言い換えればもう1人は不合格であり、志望校に入学できないとなるのです。
募集定員と志願者数
倍率を算出するうえで必要となるのが、募集定員と志願者数です。募集定員とは、高校ごとに何人の合格者を出すかを定めたもので、高校によって募集定員は異なります。
志願者数は、その高校に何人の受験生が「受験したい」と考えているかを表した数字です。受験当日までに数回発表される場合が殆どですが、早い段階で公表されるものは進路希望調査をもとに算出されています。最終的には願書提出後になる年明け~2月ごろに最終志願者数をもとに出願倍率が決定されるため、早い段階の倍率を見て焦る必要はないでしょう。
合格者数と合格率
合格者数は、高校に合格した人数のことを指します。実際の試験を受けて合格基準点をクリアした人数と考えればいいでしょう。合格率は、受験生の総数に対して合格した人数を割合で示したものです。
例えば、定員120人のC高校に150人が受験し、120人が合格となった場合の合格率は「合格者数120人÷受験生の総数150人×100=80%」となります。
これと似たような言葉に不合格率という言葉があります。文字通り受験生のうち不合格になった受験生の割合を示すもので、C高校の例では20%となります。公立高校入試よりも私立高校入試で扱われることが多い数字です。
出願倍率、受験倍率、実質倍率の違い
ひと口に倍率と言っても、その種類は大きく3つに分けられます。3種類の倍率と計算式は次の通りです。
概要 | 計算式 | |
---|---|---|
出願倍率 | 出願後に発表される倍率。 | 志願者数÷募集定員 |
受験倍率 | 試験終了後に発表される倍率。何らかの事情で受験しなかった生徒が母数から抜ける。 | 受験者数÷募集定員 |
実質倍率 | 合格発表後に発表される倍率。 | 受験者数÷合格者数 |
私立高校は併願校も多く、入学辞退者をある程度足したうえで合格発表をしているため、公表されている募集定員よりも多い人数で合格者を発表する場合があります。公立高校の実質倍率は、定員を踏まえて合格者を決定するためこの限りではありません。但し、難関私立高校の場合は例外です。難関私立はすべり止めとして受験することが少なく、定員ピッタリで合格通知を出す場合もあります。私立高校によってスタンスは異なるため、詳しくは学校の先生や塾に聞いてみてください。
これから受験を控えている人は、出願倍率・受験倍率ではなく、過去の実質倍率を見るようにしましょう。
群馬県、栃木県、埼玉県の公立高校の倍率(2023年度版)
次項は志願者数が多い高校の中で倍率が高かった主な高校です。各県の教育委員会が発表した志願先変更後の普通科の出願倍率を参考にしています。
群馬県立高校の倍率
※群馬県では、2023年度まで前期選抜と後期選抜がそれぞれ分かれて実施されていました。本記事では一般入試にあたる後期選抜の倍率を参考にしています。
※伊勢崎高校はグローバルコミュケーション科を含む
高校名 | 出願倍率 |
---|---|
高崎北高校 | 1.65 |
高崎経済大学附属高校 | 1.56 |
伊勢崎清明高校 | 1.35 |
高崎女子高校 | 1.31 |
伊勢崎高校 | 1.26 |
群馬県内の公立高校志願者の総数は6,276人で、後期募集人員6,344人を下回っています。平均倍率も0.99倍と1倍を下回りました。2024年度から入試制度が変更となるため、募集人数の変更や志願者数の増減が発生する可能性があります。
栃木県立高校の倍率
高校名 | 出願倍率 |
---|---|
宇都宮北高校 | 1.57 |
宇都宮中央高校 | 1.54 |
佐野東高校 | 1.46 |
宇都宮南高校 | 1.39 |
宇都宮女子高校 | 1.28 |
上記表以外として、専門学科に分かれてコースが設置されている宇都宮白楊高校などは、約1.6~1.8倍の高い倍率を有しています。
普通科よりも募集定員が少ない反面、専門的に勉強したいという受験生が数多くいるのが特徴です。その結果、倍率が非常に高くなり、2倍近い倍率になってしまうのです。
埼玉県立高校の倍率
高校名 | 出願倍率 |
---|---|
市立浦和高校 | 2.2 |
川口市立高校 | 1.94 |
浦和西高校 | 1.45 |
大宮高校 | 1.44 |
越ケ谷高校 | 1.43 |
上記表以外では、理数科の倍率が高い傾向となりました。特に大宮高校の理数科は2.65倍と飛び抜けて高い倍率を有しています。そもそも、公立高校理数科は定員が40名で統一されており、合格者の絶対数が少ないという理由もあります。
高校の倍率の発表時期
高校入試の倍率は、各自治体の教育委員会がどのタイミングで集計しているかで発表のタイミングが異なります。
出願速報の発表時期の違い
出願速報とは、進路希望調査や出願締め切り後すぐに発表される速報値です。進路希望調査をベースに発表される速報は自治体によってタイミングが違うものの、出願速報は概ね2~3月になります。入試の時期によって異なるため、出願の締め切りがいつかを頭に入れておくと良いでしょう。
出願先を変更するのは、群馬・栃木・埼玉の3県で出願速報が公表されたあとです。ただし、よほどのことがない限り大きく倍率が変わることはありません。
群馬県、栃木県、埼玉県の発表時期
群馬県、栃木県、埼玉県はそれぞれ公立高校入試の時期がずれています。そのため、出願倍率の発表タイミングが少しずつ異なっています。2023年度の出願倍率の発表時期は以下の通りでした。尚、この時点で志願変更は完了していない状態です。
- 群馬県:2月28日(後期選抜)
- 栃木県:2月21日
- 埼玉県:2月13日
最新の情報を確認したい場合はそれぞれ教育委員会のホームページで確認しましょう。
高校の倍率予想と実際の結果
高校の倍率は、ある程度予想することができます。しかし、あくまでも予想であるため、実際に公表された結果と実際の倍率に差が出ることは覚えておかなければなりません。どのように倍率を予想するのか、具体的な方法を紹介します。
予想方法
倍率を予想するには、過去数年の実質倍率を集めなければなりません。各自治体の教育委員会のホームページで公開されているほか、赤本と呼ばれる公立高校入試用の問題集などに記載されていることもあります。最低でも過去3年分は集め倍率を予想するようにしましょう。
ポイントは、揺り戻しや隔年現象の波を見つけることです。この2つは前年度の倍率の影響を受けて、翌年の倍率に増減が発生する現象のことです。前年度の倍率が高かった高校は、翌年に志願者が減り、倍率が低くなる傾向にあります。それを読み取るためには3年分の実質倍率が必要になります。
実際の結果との差
揺り戻しや隔年現象といった倍率の波が本当にあるかどうかは、実際の結果と比較してみなければわかりません。過去3年分からわかる情報はあくまでも予想でしかないため、実際の結果とはかけ離れてしまっている可能性があります。
また、根本的に入試制度が変わってしまうと過去の倍率が参考程度になってしまうこともあります。予想するために使えないことはありませんが、予想と大きく外れてしまう可能性がある点は覚えておかなければならないでしょう。群馬県は2024年度入試がその年に該当するため要注意です。
高校の倍率が低い。1.0倍以下だと合格しやすいはウソ
発表された倍率が1.0倍前後の場合、一般的に倍率は低いと言われていますが、倍率が低いからと言ってその高校に合格しやすいわけではありません。志願者数が募集人数を下回っている1.0倍以下でも必ず合格できるわけではないのです。その理由は合格最低点と受験生のレベルにあります。
合格最低点とは、高校が合否を決定する際に使用する足切りの基準のようなものです。どれだけ定員を割っていても、この合格最低点を満たしていない人は合格を出してもらえない可能性があります。
また、倍率が低いと言っても、志願している受験生のレベルが低いとは限りません。倍率が低いという現象は上位校でも起こることであり、志願者数が少ないからと言って必ず合格できるわけではないのです。倍率が低いからと言って受験勉強をおろそかにするのは厳禁です。
志望校を変更する際の注意点
安易に倍率だけで志望校を変更するのは得策ではありません。出願倍率が公表されたのち、志願変更をする際は3つのことを意識しましょう。
多くの志願者が志望校変更する可能性がある
例えば、あなたの志望校の倍率が非常に高かったとします。この倍率を見た瞬間、あなただけではなく多くの受験生が「もっと安全圏の高校に志願変更しようかな?」と考えるかもしれません。倍率が高いということは、それだけ多くのライバルと競わなければならないため、ごく自然な流れではあります。
しかし、みんなが同じことを考えた結果、少しレベルを下げた高校に人気が集中してしまうこともよくあることです。その結果、志願変更したのに高い倍率で受験せざるを得なくなったという人も少なくありません。志願変更は受験生全員に与えられている権利です。倍率を見て直感的に変更をするのではなく、他の受験生が志願変更をする可能性を考慮して志願変更するかどうかを決定しましょう。
倍率はあくまでも参考の数字と捉える
倍率は確かに重要な数字かもしれませんが、それだけで合否を分けることはありません。ライバルが何人程度いるのかを知るには有効な数字ではあるものの、それだけで諦めてしまうのは非常にもったいないことです。倍率は、その年度内で人気のある高校がどこかを知るための基準として理解しておきましょう。
倍率が若干高くても問題ないと思える実力をつける
倍率を見て志願変更を出すのは悪くありませんが、少しぐらい倍率が高くても問題ないと思えるような実力をつけることが重要です。倍率を見て不安になる理由のひとつが、自身の勉強に対する自信のなさです。受験勉強に終わりはないものの、着実にでも実力をつけていけば、多少倍率が高くても不安に思うことはないでしょう。
もし自分だけで判断できないならば、模試の結果を参考にしたり、塾の教師に相談したりするようにしてください。倍率だけではなく、受験のことを知り尽くしているプロのアドバイスを受けて志願変更をすることも重要です。
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