大学受験で英文法を学習する必要性
英文法を勉強する意味があるのでしょうか?結論から言いましょう。
英文法を勉強する意味は大いにあります!
巷では、「いまは四技能の時代。塾・予備校で教えるような古臭い英文法なんて最近流行らない」、「受験英文法なんてネイティブは使わない。やっぱり実用的な英会話をやらなきゃ」、「共通テストには英文法の問題なんか出ないのに、文法なんてやる意味あるんですか?」という声が高校生の皆さんからも、保護者さまからもときどき聞こえてきます。
英語力に四技能が求められる現在、文法ばかりを出題するテストは減りつつあります。また、英語のネイティブスピーカーどうしが実際に交わす会話では、一部教科書的な文法が崩れている部分も確かにあります。それに加え、大学入学共通テストに英文法の独立した出題は今のところありません。
それでもなお、大学合格を目指す受験生は、英文法をしっかり勉強するべきです!
それはどうしてでしょうか。
この記事では、受験生が英文法をしっかり勉強するのがどうして必要なのかわかりやすく解説します。また、どうすれば大学入試に合格できる確かな英文法の力を身につけられるのか、その方法についてもご紹介します。
大学受験に英文法が大切な理由
そもそも大学とは、学生が大学教員という研究者に弟子入りして、小・中・高の勉強だけでは習得できない高度な専門知識や技能を学ぶ空間です。
すなわち、大学入試とは、研究者に今後弟子入りして講義を受けたり、演習や実習に積極的に参加したりできる基礎学力を備えているかを試すためのテストです。
それを突破するには、日本に観光旅行に来たアリスさんに駅やお店までの道案内をしてあげたり、ボブさんがクラスメイトに宿題の提出日を確認したりする、いわゆる軽い「英会話」的な英語だけでは知識不足です。
実際に、高校生向けの塾・予備校の授業で扱ったテーマのうち、最近出題した文章を見てみましょう。いずれも国公立大学の二次試験や私立大学の一般入試で実際に出題された問題になります。
- 物理学者ホーキング博士、宗教を語る
- 「ロウソク問題」という心理学実験:機能的固着の克服
- 生命の起源と宇宙の始まり
- 無人旅客機の実現可能性
- 枯れ木から発生する温室効果ガス
- われわれはシミュレーション(仮想現実空間)の中で生きているのか
- マオリ族の起源とその精神世界
- 縮まりつつある男女の平均寿命の差
- 大学生向けの論理学の教科書冒頭(真理値と真理表、真理関数)
- 自動車会社の株主総会におけるプレゼンの様子と資料
どうでしょう。見るからにカタそうな話題ばかりでしょう。つまり、大学入試の英語の問題文は、一部に「実用英語」めいた出題がある一方で、大学入学後に授業を受けることを想定して、学問的な内容や時事的な内容がたくさん含まれていることも特徴です。
学問的な内容の文章の場合は、さすがに高度な専門文献ではなく、予備知識のない初学者向けに学者が書いた文章(日本語の新書くらいの難易度)からの出題がほとんどです。それでも、取り立てて自分が詳しいわけでもない分野について、専門家であるプロの学者が書いた長文を高校生が辞書もない状態で読んで、内容を理解しないといけないですから、並大抵のことではありません。
学者の文章は、内容の正確さを期するために、慎重にことばを選んでおり(そのために英単語レベルが上がることもあります)、主語や目的語にはそれを修飾する長い節や区がつきます。特に複雑な、入り組んだ構造をしている箇所には多くの場合に下線が引かれていて「下線部を和訳せよ」などの設問が付けられています。
また、英語圏で一定の教養あるひとが読むような新聞や雑誌の報道記事(たとえば、『エコノミスト』や『タイム』、米国CNN、英国BBCなど)を題材にしていることもあります。報道記事・情報番組ですので、基本的には事実を購読者や視聴者に向けてわかりやすく書いているものが多いのですが、ウィットに富んだ洒落た言い回しや、皮肉めいた言い回しも含まれています。
受験生は確かな英単語力や英文解釈力を活用して、下線部の意味を精密に読み取ることが求められます。入学後にも英語で書かれた専門文献をある程度正確に読める基礎学力が身についているということの証明を、大学入試の場で求められているのです。
計算されたちみつな構成の文を組み合わせて練り上げられた高度な文章を読み取るには、英文法の正確な知識が重要です。
「塾・予備校で教えるような受験英文法をネイティブは使わない」というのは、「受験英文法を『日常会話』ではネイティブは使わない」の誤りです。もっと正確には、「受験英文法にときどき出てくる特殊な構文のなかには、日常会話ではネイティブがあまり使わないものもある」ということに過ぎません。
大学入試の勉強をしていて学習する英文法のほとんどは、英語による日常会話や職場でもふつうに使われるものですし、学問的な内容を扱う問題文であれば書きことばでしか見かけないような特殊な構文を使うことも当然出てくるということになります。
大学受験の英文法の足腰は中学英語にあり!
それでは、大学入試に立ち向かうための英文法の力はどのようにすれば身に着くのでしょうか。高校では、「論理・表現」または「英語表現」という名前の科目が毎週あって、主にそこで英文法を学習します。まずは、この授業を受けてしっかり学校のテストで得点できるようになりましょう。
しかし、塾・予備校で教えていると、「中学生のころには大丈夫だったのに、高校生になってから急に難しくなった」という訴えを高校生のみなさんからよく耳にします。どうすれば良いのでしょうか。その解決方法をご紹介します。
- 中学時代の教材、高校入試対策の教材を使用して弱点を見つける
- 高校の教科書、ワークブック等で該当する部分を繰り返し練習する
- 必要に応じて市販の参考書により練習量を増やす
高校生が学ぶ英文法のほとんどは、中学生で学ぶ英文法知識(高校入試までのレベルの英文法)の応用です。したがって、高校生の英文法がよくわからなくなった方は、中学生の英文法が確実にわかるか確認するところから始めるべきです。
たとえば、あなたが高校の「不定詞」についてわからないとしましょう(目先のテスト範囲が膨大なものであっても、欲張らずに1単元ずつ解決するのがコツです)。
① 中学校段階の教材で復習する
英語に苦手意識のあるひとは、高校入試までに使っていた本でその「不定詞」に取り組みましょう。手もとにない場合には、『レベル別問題集』(旺文社、東進ブックスからそれぞれ出ています)のもっとも易しいレベルのものをおすすめします。比較的安くて、薄手で、1つの単元につき問題が20問くらいしかないのでポイントを押えるのに効率的です。
問題演習の際、必要に応じて先生に質問しながら、ハッキリしない点が一切残らないようにします。また、単に「わかる」というレベルで満足するのではなく、「数秒以内に正解できる」、「暗記してしまっている」というレベルに到達するまで繰り返し練習してください。この状態を、筆者は自分の授業中に「脊髄反射で解ける」と表現しています。考え込まなくても解答できるくらいでないと、実際にテストで得点できる知識とは言い難いです。しっかり基礎固めし完璧にしていきましょう。
公立高校の入試問題から始めて、偏差値が高めの私立高校や国立高校の問題が解けるようになるころには、既に初級の大学入試問題が解けるようになっています。英単語のレベルが多少上がりますが、問題形式自体は高校入試と同じということも少なくないからです。
② 高校段階の教材に立ち戻る
次に高校の教科書や付属のワークブックに戻ります。高校入試の「不定詞」の問題が一瞬にして正解できるようになったあなたにとっては、高校の教材のどの部分が中学校の復習に過ぎないのか、すぐにわかることと思います。
すると今度は、高校入試段階では出てこなかった「新しい」知識が浮き彫りになって見えてくることでしょう。そしてその「新しい」知識は、ほとんどの単元で実は大した分量ではないこともよく見えてくるはずです。
それがわかったら「新しい」知識を重点的に練習して、ここでも「脊髄反射」レベルを実現してください。必要とされる知識が中学生のころより増えただけで、難しくなったわけではありません。練習して同じような例文に対応できれば良いだけです。
英文法(そして「英語」という教科そのもの)は実技です。
短期間で成果を出すことは難しいですが、練習すれば確実に効率よく簡単に処理できるようになります。
③ 仕上げに市販の問題集で入試問題に挑戦する
最後に市販の問題集を使用してさらに練習量を増やします。ここでは、多くの学校で採用されている『英文法・語法 Vintage』(いいずな書店)を例に使い方を確認しましょう。「Field 1 文法」というところに「不定詞」の項目が掲載されているはずです。ターゲットを絞ってそこだけを重点的に練習します。
Vintageは、多くの類書(『Next Stage』、『Power Stage』、『Bright Stage』、『スクランブル』シリーズなどの文法・語法問題)と同じく、入試の過去問題を網羅しています。したがって、高校に入学したばかりの新入生には難しい問題も含まれています。
わからない英単語や表現については辞書・英単語帳を利用しながら、例文のどこに自分がこれまでに練習してきた「不定詞」の知識が使われているのか注意しながら進めてください。具体的なプロセスを説明しておきましょう。
英文法学習の流れ(例:Vintage)
- 該当する文法項目のページを目次で見つける(いまの例では「不定詞」)
- 左のページの問題を、辞書を使いながら、解いてみる。
- 右のページにある項目を確認する。まちがっていた、忘れていた、というとき(たとえば “too … to …” の構文だと思ったのに、“… enough to …” と書いてあった)には、これまでに使った中学生用教材や高校生用教材に戻って確認。
- 納得したら、辞書を使いながら例文を日本語に直す。
- 直した文とページの下にある和訳文を比較し正しく理解しているか確認。
- わからないところは先生にすぐに質問!
例文を日本語に直す訳読のプロセスは、絶対に取り入れてください。「わかる」というレベルで自己満足せず、確実に得点できる学力を手に入れるためにはどうしても必須になります。東大や京大、医学部など難関大志望者のみなさんは特にです。
見ればすぐにわかる程度の例文はともかく、見るからに複雑でいかにも難しそうな、できれば避けて通りたくなる例文ほど、しっかり紙に書いて丁寧に日本語に訳してください。
この学習法のメリット
- 「論理・表現」(または「英語表現」)の定期テストでしっかり得点して、通知表で好成績を獲得する。
- 「脊髄反射」の境地に達した英文法の技術(実技ですから、あえて「知識」とは呼ばないことにします)があれば、膨大な「共通テスト(英語・リーディング)」の問題であっても時間内に全問解答できる。
- 「脊髄反射」の境地に達した英文法の技術があれば、「共通テスト(英語・リスニング)」の時間に、放送された英文の意味を考えているうちに時間切れになって次の問題に進んでしまう、という事態が回避できる。
- 空所補充や並べかえ、間違い探しの問題に強くなって、主に私立大学の一般入試で頻繁に出題される英文法問題を確実な得点源にできる。
- 複雑な構文であっても正確に構造を把握して正しい日本語に訳す能力を身につけて、主に国公立大学の二次試験で頻繁に出題される下線部和訳問題を確実な得点源にできる。
当たり前の項目を当たり前に!中学校のころと基本は同じ
以上、大学入試に挑戦するみなさんにとって、英文法の練習は絶対に不可欠であること。中学校段階の項目を確実にマスターしてから高校段階の項目に進むべきであること。そして、「わかる」というレベルで立ち止まることなく「一瞬で正解できる」というレベルまで進むべきであることをお伝えしてきました。
繰り返します。
英文法は、実技です。
実技の攻略方法は、繰り返し練習することです。
必ず速く正確に処理できるようになります。
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