高校英語の悩み「膨大な単語!」
塾・予備校で高校生の英語を担当していると、「こんなに大量の単語、覚えられないっ!」というお悩みの声をよく聞きます。「中学校までは、1つひとつレッスンが進むたびに順番に覚えていくことができたのに…」、そんなふうに高校1年生がぼやいています。高校生になると、多くの学校で教科書だけでなく単語帳を指定されて、毎週小テストを課され(これだけでも1週間に50個!)、定期テストになる度に「それじゃあ今学期に小テストの範囲にしていた単語全部が試験範囲ね」(300個!)、ということになり、「こんなにいっぺんに覚えられるかーーー!」と涙することになります。
高2・3の先輩たちの中には、「どうせ無理だ」とあきらめるひとも一部に出てきますが、そんなことを言っていては大学受験ができなくなってしまいます。種類にもよりますが、大学受験生用の単語帳には大体2,000語くらいの見出し語があって、更にその派生語(元の単語の名詞形・動詞形・形容詞形・副詞形…)やそれを使った熟語まで入れると、覚えなくてはいけない項目はその数倍にまで膨れ上がることになります。
中学英語とは文字通り桁違いの圧倒的な物量を前にして心が折れそうになる高校生のみなさん…。この記事では、そこから少しでも脱出して、(今よりは)ラクにたくさんの英単語を正確に覚える方法を塾・予備校教師の視点からいくつかご紹介します。
どの単語帳を使えばいいの?
ハッキリ言います。共通テスト~一般的な大学受験であれば(たとえ東大であっても)、大学受験生用ならほぼ何でもいいです。多くの高校では、学校で単語帳を指定されていますから、まずはそれをしっかり使うこと。例えば、学校で『英単語ターゲット1900』(旺文社)や『速読英単語 必修編』(Z会)などを使っている人が多いようですが、これだけあればほとんどの入試は大丈夫です。
ごく一部、特殊な受験生のための特殊な単語帳も存在します。たとえば文系で早慶を受験する方。ほかの入試に比べて、相当高度な単語が問題文に含まれているので(英検®準1級以上のレベルが目安です)、『英検®出る順パス単準1級』(旺文社)や『速読英単語 上級編』(Z会)あたりがおすすめです。
また理系で、医学部医学科を受験する方。医学に関わる単語が含まれることが多いです。たとえば、「小腸」や「膵臓」といった臓器、「喘息」、「糖尿病」など病気の名称を英語で言えますか。気がつくたびに自分で調べることが基本ですが、『医学部の英単語』(教学社)など専門の単語帳も市販されています。但し、普通の単語帳に出ている単語を十分に覚えてからの話ですが…。
繰り返しになりますが、ほとんどの高1・2生、受験生にとって、最優先は学校で普段から使用している単語帳です。本屋さんに行って「もっといい単語帳」とやらにこだわっている時間を、「もっといい単語帳の使い方」を工夫する時間に充ててください。
結局、どうやって覚えるのがいいの?
機械的な棒暗記に安易に走ることなく、いろいろなところに記憶のきっかけを作って覚えるのがいいでしょう。自習室でたまに、「astronomy 天文学、 astronomy 天文学 …」と20回くらい紙に書いて覚えようという生徒を見かけます。しかし、そういう生徒は数日もすれば直ちに記憶が怪しくなっていきがちです。また、この単語とよく似た見た目をしている astronomer (天文学者)や astronaut (宇宙飛行士)が出てくると、もうパニックでしょう…。
ところで、私たち塾・予備校の教師が生徒の皆さんのことを覚えるときに、出席簿を見て、「今日は1番から30番の生徒を覚えて、後で小テストをしよう」なんて考えていると思いますか。そんなことをしていても、なかなか頭には入っていきません。それではどうしているのかというと、例えば、座席表を作って皆さんを並べてみます。これだけでも「ああ、最前列の左側にいた生徒だな」とか「壁際にいたボウズ頭の生徒だ」などと記憶し易くなります。更にに休み時間にみなさんにどんどん話しかけます。そうすると、「いつもこの二人は一緒にいるから仲良しなんだな」とか「この男の子たちはみんなサッカー部なのか」とか「この生徒は東大に行きたいんだな」などと思うようになります。
このことから、どんな記憶のコツが引き出せそうですか。そうです。敢えて情報を増やしています。皆さんの顔と名前を覚えるために、私たちは敢えて情報を増やすことで、情報どうしを相互に関連付けているのです。一見すると非効率なようにも思われますが、こうすることで記憶をよみがえらせるための「とっかかり」も増えていき、暗記した情報を正確に再生しやすくなるのです。単語帳では、皆さんがふだん赤シートで隠して暗記に努める赤字以外の部分がその「とっかかり」に当たります。
単語を関連付ける方法「派生語・類義語・対義語」
派生語
派生語とは、ある基本の単語に対応する別の品詞の形のことです。例えば、nation(国家)という名詞があります。これに対して、national (国家の、全国的な)という形容詞をつくることができ、そこから更にnationally (国を挙げて、全国的に)という副詞も作ることができます。また、別の語尾を付けると nationalize (…を国有化する)、nationalization (国有化)という動詞や名詞を作ることもできます。その気になれば、もう少し政治的で難しそうな nationalism (国粋主義)、nationalist (国粋主義者)、nationalistic (国粋主義的な)、nationalistically (国粋主義的に)なども作ることができます。派生語を作る部品にも規則性があるので、観察しておくと知らない単語でも意味を予想しやすくなります。更に名詞nationの頭に inter- という部品をつけることで、international (国際的な)、internationally (国際的に)、internationalize (…を国際化する)、internationalization (国際化)といった派生語をつくることができます。これだけで、nation から出発して既に13語のお友達グループが出てきました。
類義語
類義語とは、ある単語に似た意味を持つ単語のことです。例えば、international とよく似た単語に global (グローバルな)があります。これにも多くの派生語があります。例えば、globe (地球、地球儀)、globally (グローバルに)、globalize (グローバル化する)、globalization (グローバル化)があります。これでまた5語増えました。
対義語
対義語とは、ある単語と反対の意味をもつ単語のことです。例えば、national を「国有の」と見ると、private は「民営の」と訳される対義語です。これにも派生語がたくさんあります。privacy (プライバシー)、privately (内密に、民営で)、privatize (…を民営化する)、privatization (民営化)などです。またしても5語も増えてしまいました。
名詞nationから出発して、ざっと考えただけで23語も出てきたことになります。どうですか、このペースで行くと100個や200個の単語でも何とかなりそうな気がしてきませんか。派生語や類義語、対義語は単語帳にも(主に赤字以外のところに)掲載されています。面倒くさがらずについでに覚えようとしてみると良いでしょう。小テストは赤字からしか出ない、という学校も多いでしょうから、もちろん完璧でなくともかまいません(個人的には、完璧主義はむしろ語学の大敵だと思います)。
単語帳は前半を重点的に覚える
単語帳の構成は種類によって様々ですが、たとえば『英単語ターゲット1900』や『英検®出る順パス単』のように、難易度や優先順位によって単語を並べているものも多くあります。単語帳がせっかく優先順位をつけてくれているというのに、それを活用しないのはもったいないことです。
『英単語ターゲット1900』を例にとってみましょう。「Part 1 常に試験に出る基本単語800語」、「Part 2 常に試験に出る重要単語700語」、「Part 3 ここで差がつく何単語400語」に分かれています。英単語に悩む単語難民の生徒さんほど、「1週間で3周して完璧にします!」なんて無謀なことを言っているものです。そんなのは、(私自身も含めて)ふつうの人間には無理な相談です。繰り返しますが、完璧主義は語学の大敵です!あなたがいま英語が苦手でお困りならば、私はまず「 Part 2 や Part 3 は後回しにしましょう」と声を大にして言いたい。まずは Part 1 だけやりましょう。それでも800語もあります。Part 1 はさらに細かく Section 1~8 に分かれています。せっかく小分けにされているのですから、まずは Section 1 だけでもやってみてはいかがでしょうか。
その際には、雑に赤字だけを棒暗記するやっつけ仕事をするのではなく、以下を守って丁寧にやってみてください。
① 青字の熟語は必ず覚える
② 黒字の派生語もできるだけ覚える(というより、法則性を発見する)
③ 辞書を片手に右のページの例文の訳読を試みる
まずはPart 1, Section 1 の100語について、これをしっかり実行します(もっとも、派生語等のところで見たように100語をこの方法でみっちりやれば、実際にはこの何倍もの単語や熟語が頭に入って行きます)。すると、学校で使っている英文法問題集(Vintage や Engage など)の文法・語法・イディオムのページに出てくる多くの項目と重複していることに気づくかもしれません。単語帳と英文法問題集は深くリンクし合っているので、いずれかに集中して取り組むともう一方の勉強もある程度は進んだことになって、良い循環が生まれていくのです。
英英辞典で基本単語にさらに習熟する
上記の方法で、少なくとも数か月はかけて、単語帳の特に前半部分をしっかり鍛え、高1で教わる英文法を大体使えるようになってきたら、次のおすすめは上級の単語帳ではなく、英英辞典です。英和辞典は英語を日本語に、和英辞典は日本語を英語に訳してくれる辞書ですが、英英辞典は英語を英語で説明します。最近、高校生のみなさんが使っている電子辞書には Longman Dictionary of Contemporary English や Oxford Advanced Learner’s Dictionary が標準的に搭載されていることと思います。全部英語で書かれているので最初は使いづらさを感じるかもしれませんが、似ている単語どうしの意味のちがいに困っても、学校の職員室にいる外国人の先生のところまでわざわざ聞きに行かなくともネイティブスピーカーの意見をいつでも参照できます。それに、単語帳や英和辞典にある日本語の訳語だけではつかみきれなかった意味合いを発見することもあるでしょう。電子辞書に搭載されているような学習者向けの英英辞典は、一定のレベルの比較的易しい単語で説明文が書かれることになっています。それが大体、単語帳の前半くらいの難易度なのです。使い始めの頃は英英辞典を読むのに英和辞典が必要な場合も出てくることでしょうが、同じような単語や表現が多用されるので1か月もすれば段々慣れてきます。
例えば、ある単語帳に reservation という単語も appointment という単語も「予約」という訳語が当てられていたとします。Longman によると前者は “an arrangement which you make so that a place in a hotel, restaurant, plane etc is kept for you at a particular time in the future” (ホテルや飲食店、飛行機等における場所が将来の特定の時間にあなたのために取って置かれるようにあなたがする調整のこと)とあり、後者は “an arrangement for a meeting at an agreed time and place, for a particular purpose” (特定の目的のために合意された時間と場所でひとに会うための調整のこと)とあります。前者は場所取りという意味での「予約」であり、後者は歯医者さんなど他人に会う約束という意味での「予約」であることが、英英辞典を読むとはっきりとわかります。
英英辞典には最重要の基本事項が詰まっています。これが使いこなせるだけで合格点に優に到達できる入試問題が世の中にはたくさんあるほど、高校生や受験生にとって心強い道具です。
W早稲田ゼミでも英単語のお悩み相談承ります
高校生や大学受験生なら誰しも英単語の悩みに一度はぶつかるもの。W早稲田ゼミのハイスクール各校舎には頼りになる英語教師が揃っております。自分に合った英単語の覚え方、単語帳や辞書の選び方など、塾生以外もHPから随時お問合せが可能です。もちろん、お気軽にお近くの校舎までお問合せいただいても大丈夫です。
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