大学入試は近年大きな変更が加えられています。大学入試センター試験が大学入学共通テストと変化したように、学校推薦型選抜(旧 推薦入試)にも変更がありました。志望校に合格するには、それぞれの選考方法の内容や出願条件などについて基礎知識を理解しておく必要があるでしょう。
本記事では、現在の推薦入試の種類と試験内容を詳しく解説します。
大学入試における推薦入試は学校推薦型選抜のこと
2023年現在、教育現場において「推薦入試」と呼ばれるものは学校推薦型選抜という入学試験とされています。2020年に名称が一新されました。文部科学省が発表した「2021年度(令和3年度)国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」では以下の数字が示されています。
上記のグラフでは、大学の種類によって差はあるものの、入学者全体の約4割弱は推薦入試(学校推薦型選抜)で合格した受験生であることがわかります。つまり、受験する側の人は一般入試だけにフォーカスするのではなく、学校推薦型選抜も目標に学習に取り組むことで合格できる機会を増やすことができるのです。
大学入試の種類
ひと口に大学入試と言ってもその種類は以下のように多岐にわたっています。
こちらの記事では、学校推薦型選抜と総合型選抜について知りたい人に役立つ内容となっています。ぜひ参考にしてください。
また、以降で「評定平均」と呼ばれるランク付けが出てきます。学校により評価が10段階評価か5段階評価かで数値は変わりますが、5段階評価の場合は一般的に以下を目安としていることを覚えておきましょう。
学校推薦型選抜
学校推薦型選抜には、大きくわけると指定校推薦と公募推薦になります。更に詳細に分けた場合の正式名称が以下になります。
- 指定校制推薦選抜(指定校推薦)
- 公募制一般推薦選抜(公募推薦)
- 公募制特別推薦選抜(公募推薦)
それぞれ試験内容や出願・試験時期、メリット・デメリットが異なります。詳しく見ていきましょう。
指定校制推薦選抜(指定校推薦)
指定校制推薦選抜とは、現役生のみが出願できる学校推薦型選抜の一種です。現役生の間では「指定校」と省略して言われることもあります。
高校1年生~3年生1学期までの成績や社会・課外活動などの評価で出願できるのが特徴です。出願は専願のみで、合格後に入学辞退することはできません。合格発表の時期は11~12月が多く、受験料は30,000~35,000円が相場となっています。
※正確な受験料やスケジュールは、自身の志望校をチェックするようにしましょう。
試験で課される内容は次のようなものが設定されています。以下のすべてが課されるわけではなく、科目は大学によって異なる点を覚えておきましょう。
- 志望理由書
- 小論文
- 面接
- 口頭試問
- プレゼンテーション
夏休み前の進路指導などで提示されることが多く、希望すると高校時代の成績や態度などを考慮して出願資格があるか否かが決まります。募集人数は非常に少ない反面、自分の通っている高校内選抜を通過すればほぼ合格は決定したものと考えて良いでしょう。
必要な評定平均や試験内容・試験時期は大学ごとに異なりますが、ほかの学校推薦型選抜よりも早く合否が判明します。希望する大学の推薦枠があり、評定の基準をクリアできているのであれば受験を検討する価値はあります。
指定校制推薦選抜のメリット・デメリット
高校1年生からコツコツと学習を続けており、成績も優秀な状態を維持できているのであればぜひ利用したい入試制度です。指定校制推薦選抜ならではのメリットとして、入学試験の結果ではなく評定平均がB以上で出願できることが多く、さらに合否判定されるという点があります。本来の学力では手が届かないような大学に合格できる可能性があるのも指定校制推薦選抜のメリットです。
デメリットとしては専願であるため合格後の入学辞退ができない点、合格後も学習を続けて一般入試での合格組との学力差を埋める必要がある点です。また、例年同じ大学への推薦枠があるわけではない点、国立大学には指定校制推薦選抜がない点にも注意しましょう。
公募制一般推薦選抜(公募推薦)
公募制推薦選抜は、学校から推薦書をもらって受験をする入試方法です。さらにそのうち、成績基準をクリアしている生徒が受験できる推薦選抜を公募制一般推薦選抜と言います。
指定校型推薦選抜と同じく高校1年生~3年生 1学期までの成績基準をクリアしているかどうかが出願条件であり、合格発表の時期もほぼ同じです。大学にもよりますが専願・併願ともに受験可能で、国公立大学の一部でも採用されています。受験料は国公立大学で15,000~20,000円、私立大学で30,000~35,000円です。
※正確な受験料や選抜日程は、自身の志望校をチェックするようにしましょう。
試験内容は学校によって異なります。以下一例を記載します。
【国公立大学】
- 横浜国立大学:小論文、面接、志望理由書
- 高崎経済大学:学力試験、面接 ※一部学科で小論文もあり
【私立大学】
- 青山学院大学:小論文、面接
- 学習院大学(政治学科):小論文、面接、学力試験
指定校制推薦選抜と同じく成績基準が設けられているのが特徴ですが、定員枠が多く比較的受験者が多い入試方法です。多くの大学で、試験には小論文や面接を設けています。
また、大学にもよりますが国立大学・公立大学も枠を設けている場合もあります。推薦するかどうかを判定する成績は指定校制推薦選抜と同じく高1~高3の1学期までの成績で判定され、推薦が受けられるかどうかが決まる仕組みです。
公募制一般推薦選抜のメリット・デメリット
公募制一般推薦選抜のメリットとして、成績基準に達していれば推薦を受けられる可能性があるため、指定校制推薦選抜よりも間口が広い点です。最終的には試験で合否が判定されるのもの、受験のチャンスを1回でも多くするという意味ではぜひ活用したい方法と言えます。
反面、一般入試と比較すると入試の合格基準が不透明な場合が多く、合否発表があるまで油断ができない点です。また、仮に公募制一般推薦選抜で落ちてしまった場合は一般入試に向けて勉強し直さなければならないため、受験準備を万全にしておく必要があるでしょう。
公募制特別推薦選抜(公募推薦)
公募制のうち、成績基準よりもほかの成績や活動実績が重視される形態を公募制特別推薦選抜と言います。
公募制一般推薦選抜とよく似ていますが、出願時に必要な条件が学習成績ではなく部活動や委員会活動などの成績が一定以上必要という点が異なります。以下、各大学の試験内容の一例を記載します。
【国公立大学】
- 埼玉大学 教育学部(図画工作):共通テスト、実技、面接、志望理由書、作品
- 群馬県立女子大学 国際コミュニケーション学部:面接、活動記録
【私立大学】
- 桜美林大学 芸術文化学群:面接、小論文、実技
- 創価大学 スポーツ推薦入試:面接
昔の「一芸入試」をイメージする人もいるかもしれませんが、そちらは総合型選抜となります。出願要件が特殊で間口は公募制一般推薦選抜よりも狭いものの、チャンスがあればぜひ活用したい試験です。
試験内容も面接や小論文のほか、芸術系の推薦を受けた場合は実技試験が実施されるなどの特色があります。ほかには帰国子女枠も公募制特別推薦選抜に分類されます。また大学によっては専門学校枠・総合学科枠を設けている場合もあります。
公募制特別推薦選抜のメリット・デメリット
公募制特別推薦選抜のメリットは、本来学力では合格できないような大学に出願できる点です。大学の特色や部活動の活発さによって異なりますが、大学として特定の領域を強化したい場合などにこの枠が設けられていることがあります。大学進学後も引き続き同じ分野での活動を続けたい人にもおすすめの入試制度と言えるでしょう。
しかし、一般入試で入学してきたほかの学生たちとの学力の穴埋めは必要です。特にスポーツ系などの場合は練習と学業を両立する時期が発生します。また、公募制一般推薦選抜同様に不合格であった場合は、一般入試に向けて再度体制を整えなければなりません。
総合型選抜(旧 AO入試)とは
以前のAO入試(アドミッション・オフィス入試)は、2020年に名称が総合型選抜に変更されました。一昔前は「一芸入試」と呼ばれていた時期もある、特色のある入試方法です。
公募制特別推薦選抜とよく似ていますが、総合型選抜は学校からの推薦が必要なく、自己推薦で出願可能です。原則専願であり合格発表の時期がやや早めの10~11月前後という違いもあります。
総合型選抜は国公立・私立の両大学で行われています。以下一例を記載します。
【国公立大学】
- 東京大学:共通テスト、小論文、面接、プレゼンテーション
- 東北大学(Ⅱ期):筆記試験、面接
【私立大学】
- 上武大学 ビジネス情報学部:小論文、面接
- 慶応義塾大学 文学部:小論文(学力試験を含む)
「主体性・多様性・協調性」を重視する風潮で生まれた入試形態であることから基本的に学力試験はない学校が多く、活動実績はエントリーシート、必要であれば面接などで合否判定が行われます。ほとんどの学校が専願での出願を前提としており、合格後の入学辞退はできません。
学校推薦型選抜と異なる点は、多くの学校で、合格後に大学指定の入学前教育が実施される点です。入学後に学力が重荷となって退学しないよう、課題や小論文などの提出が求められます。大学によっては講習を行う場合もあるため、受験前に一度確認しておくと良いでしょう。
当初は私立大学にしか設置されていない入試方式でしたが、数は少ないものの近年では国公立大学でも総合型選抜を実施している場合も増えてきました。学校側からの推薦などは不要なため、どうしても受験したい、合格したい大学があれば受験も視野に入れましょう。
エントリーシートについて
総合型選抜特有の提出書類にエントリーシートがあります。旧AO入試時代から存在している、自己PRや志望動機を記載する重要な書類です。エントリーシートには、以下の情報を記載するのが一般的です。
【基本的な情報】
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所・電話番号
- 顔写真
- メールアドレス
【受験に関する情報】
- 出身高校
- 志望学部・学科
- 志望動機
- 自己PR
- 活動実績
特に重要だと言われているのが「志望動機」と「自己PR」です。志望校への思いや自身の強みをつづったりする重要な項目ですが、書き方によっては書類審査で合否に影響を与えてしまう可能性もあります。
この2つを上手に書くポイントは、記入するテーマを洗い出した上で、志望する学部・学科や大学の特色と結びつけることです。文章のチェックは学校や塾の先生にお願いすると良いでしょう。また、記入したエントリーシートをもとに模擬面接に付き合ってもらうなどの対策も有効です。
国立・公立大学と私立大学の学校推薦型選抜の違い
国立・公立大学と私立大学では、実施される学校推薦型選抜に違いがあります。
大きな違いとしては指定校制推薦選抜の有無です。指定校制推薦選抜は私立大学のみが実施している入試制度であり、国公立大学にはありません。一般入試以外で受験の回数を増やすにはAO入試や公募制一般推薦選抜・公募制特別推薦選抜を活用しましょう。
また、国公立大学の場合は公募制での合否判定に共通テストを採用している大学もあります。必要な評定もA以上としている学校も多いため、公募制推薦の試験だけで合格できるわけではありません。
一方で、国公立大学の医学部には「地域枠推薦選抜」と呼ばれるものが用意されていることもあります。これは全国枠とは別に、地域の医師不足解消を目的とした入試制度で、卒業後に指定の医療機関に従事する条件が課されています。公立大学の場合は県外の高校生も対象としているケースもあるため、医学部受験を考えているのであれば検討してみても良いかもしれません。
大学受験で学校推薦型選抜を利用する際の対策・注意点
学校推薦型選抜での大学受験を狙っている場合、以下の2つの対策が必要です。
- 高校1年生から準備する
- 一般入試の対策もしておく
それぞれ詳しく見ていきましょう。
高校1年生から準備する
学校推薦型選抜を受験するには成績や学内活動などが深く関係します。最終的には大学側が課す入学試験で判断されるものですが、出願するにも調査書の成績基準をクリアしていなければできません。学校推薦型選抜を受けるのであれば、高校1年生から定期テストや部活動と総合的に力を注ぐ必要があります。また、英語検定などの外部検定試験も3年生になる前に取得しておくこともおすすめします。
学習面においては定期テストに重点を置き、好成績をキープしておくことが重要です。詳細な勉強法は「大学受験には高校の定期テストが大切?定期テストで高得点が狙える勉強法」で紹介しています。こちらの記事を参考に、評定平均を高い状態で維持しておきましょう。
一般入試の対策もしておく
学校推薦型選抜で大学合格を目指していても、一般選抜の対策もしましょう。総合型選抜での受験の際も同様ですが、旧推薦入試・AO入試だけで100%合格できる保証はどこにもありません。万全の状態で臨んでも不合格になってしまう可能性はあります。
学校推薦型選抜・総合型選抜はあくまで受験方法のひとつと考え、一般選抜に向けて勉強するようにしておけば焦りは少なくなります。一点集中で受験勉強を行うのも重要ですが、後から取り返せない状況になってしまわないよう、普段から一般選抜に向けた受験勉強を続けることが重要です。
W早稲田ゼミについて
W早稲田ゼミでは、高校生を対象としたハイスクール校舎が複数ございます!
約半数が一般入試以外を選択しているように、近年、大学入試制度が大きく変わっています。
そのため、最終的に推薦入試を選択するかに関わらず、定期テスト対策等も含めて早期から大学受験を意識しで学習することが大切です。
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