大学入試の試験のひとつに指定校推薦があります。一般入試や学校推薦型選抜(公募制)とは少し変わった仕組みを採用していますが、条件にあてはまれば学力試験では合格の可能性が低い大学に合格できる可能性もあるのです。
本記事では、指定校推薦の概要と流れ、指定校推薦で大学受験をするメリット・デメリットを解説します。
目次(クリックで開閉)
・指定校推薦とは┗指定校推薦と公募推薦(公募制)の違い
┗募集時期と受験日程の目安
┗基準と出願条件
・指定校推薦の選抜方法の流れ
┗校内選考
┗出願
┗入試・合格発表
・指定校推薦に関わる評定平均について
・指定校推薦を目指して評定平均を上げる方法
┗学校の成績を高い状態で維持する
┗部活動や生徒会活動に力を入れる
┗欠席日数を少なくする
・指定校推薦のメリット
┗合格できる可能性が高い
┗学力試験がない
┗偏差値以上の大学に合格できる可能性が高い
・指定校推薦のデメリット
┗専願(他大学を受験できない)である
┗校内選考が厳しい場合がある
┗国公立大学は受験できない
・指定校推薦の試験内容と対策
┗志望理由書
┗面接
┗小論文
指定校推薦とは
指定校推薦(指定校制)とは、大学側が特定に高校に対して生徒を募集する入試制度のひとつです。募集枠が少なく志望校の募集が必ずあるわけではありません。また、出願するには校内選考を通過しなければならないものの、通過すればほぼ合格すると言われています。
大学側が通っている高校を指定すること、校内選考を通過することなど厳しい条件がそろっているのが現実です。しかし、志望校で募集がある場合は受験のチャンスが増えることから積極的に活用したい入試方法と言えるでしょう。
指定校推薦と公募推薦(公募制)の違い
指定校推薦は、学校推薦型選抜と呼ばれる仕組みのひとつです。同じ括りの中には公募推薦(公募制)と呼ばれるものがありますが、指定校推薦と公募推薦はそれぞれ別物です。
どちらも在籍する学校長の推薦が必要な点は共通していますが、大学側から高校に対しての指定はなく、全国どこの高校からでも受験できるのが公募推薦の特徴です。指定校推薦の場合は、事前に大学から指定された高校からしか受験できないため、大きな違いと言えます。
また、公募推薦は指定校推薦とは異なり、学校の成績以外の成果での出願も可能です。代表的なものは部活動の成績や文化活動などが該当します。出願条件や方法が異なる点を理解しておいてください。
募集時期と受験日程の目安
指定校推薦の募集時期は、概ね6~8月で行われます。高校の進路指導室前で公開されたり、高3の夏休み前の三者懇談会などで公表されたりすることが多いようです。出願する場合はその旨を担任の先生に伝え、その後の動きを確認したり、必要な書類の作成をしたりしましょう。
基準と出願条件
指定校推薦の出願基準は、大学によって異なります。主なものは評定平均が基準として扱われますが、5段階評価の場合は最低でも4以上が必要になる大学がほとんどです。大学によっては3.5でも出願可能としている場合もありますが、逆に上位校であれば4.5なければ出願基準をクリアできない場合もあります。
また、実際に入試を受けるまでに校内選考が行われ、その中から2~3人と少人数しか入試に挑戦できないため、成績上位でいることが有利になることは言うまでもありません。評定平均については後述しますが、高1から地道に好成績を取り続けることが重要です。
指定校推薦の選抜方法の流れ
指定校推薦の選抜方法は、以下の流れで行われます。
- 校内選考
- 出願
- 入試・合格発表
大学や学部学科によって若干の違いはあるかもしれませんが、概ねどの大学でも同じ流れで選抜が行われます。それぞれの過程を詳しく見ていきましょう。
校内選考
指定校推薦は6~8月に高校から提示され、希望者を募ります。募集を締め切ったのち、高校から大学に対して誰を受験させるかを決定する校内選考が行われます。校内選考では高1からの評定平均が重視されると言われていますが、明確な基準は非公開です。先生に聞いても答えてもらえないため、日ごろから成績を意識しておくことが重要です。
校内選考は、7~9月の間に行われることが多く、その結果受験者が決定されます。定員以上の希望者がいる場合は、すべての希望者を比較して最終的な受験者が決定される流れです。大学によって時期は異なりますが、概ね夏休みの間に校内選考が行われると思っておくと良いでしょう。
出願
校内選考を通過すると、大学に対して出願を行わなければなりません。この時点ではあくまでも受験するチャンスを掴んだだけであり、合格が決まったわけではない点に注意してください。
出願する際は、以下の書類を大学に提出しましょう。締め切りは10~11月あたりです。
- 入学志願表
- 志望理由書
- 調査書
- 推薦書
受験生が用意するのは、入学志願表と志望理由書の2通です。入学志願表は必要事項を記入するだけですが、志望理由書はなぜその大学に入学したいのか、卒業後にどのようなビジョンを描いているのかなどの詳しい内容を記載する必要があります。「家から近い」や「学校の先生から勧められたから」など、主体性・積極性がない内容は避けましょう。
調査書と推薦書は学校の先生が用意する書類です。出願に間に合うよう、先生に作成を依頼しておいてください。なお、大学によっては他にも必要な書類がある場合もあります。受験する大学のホームページや進路指導を担当している先生などに確認して、抜け漏れがないように準備しましょう。
入試・合格発表
「出願したらほぼ合格」と言われることも多い指定校推薦ですが、大学によっては面接や小論文、プレゼンテーションなどの試験が課される可能性があります。詳細は大学ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
試験は12月ごろに行われ、ほかの入試よりも早い段階で合格発表がされる場合がほとんどです。早い大学はもっと早く入試と合格発表がされるため、前倒しでの対策が必要になる場合もあります。入試までに余裕を持った対策をしておきましょう。
指定校推薦に関わる評定平均について
指定校推薦の出願資格は、評定平均となっています。評定平均とは高1の1学期(前期)から高3の1学期(前期)までの成績を合計し、科目数で割ったものです。5段階評価で示すものであり、通知表が10段階評価であっても5段階に計算し直す必要があります。
ポイントは高1の1学期から出願直前の高3の1学期までの成績が含まれる点です。指定校推薦の出願には、最低でも4以上の評定平均が目安となるため、3年間の成績の平均を4以上に保っておく必要があります。
指定校推薦を目指して評定平均を上げる方法
繰り返しになりますが、評定平均を上げるためには高1の頃から成績を意識した勉強や定期テスト対策が必須です。しかし、それ以外の点でも意識する点があります。ここでは、評定平均を上げるための3つのポイントを解説します。
学校の成績を高い状態で維持する
高1の1学期の成績から評定平均に反映されるため、定期テストでは常に高得点もしくは好成績を収める必要があります。指定校推薦までに実施される定期テストの回数は、3学期制であれば12回、2学期制(前期後期制)であれば10回となります。このうち、高1・2で実施されるテストの回数は10回(2学期制であれば8回)となるため、高3になるまでに評定平均の8割が決まってしまうのです。
当然、高3になってから評定平均を高めようと思っても、それ以前の成績が悪ければ逆転は難しくなるでしょう。受験生になる前、もっと言えば、高校生になってから定期テストで点数を取れるような勉強をしていなければ、指定校推薦はもらえないのです。
また、副教科についてもきっちり対策することが重要です。多くの人が手を抜きがちですが、副教科も評定平均に含まれる重要な数字であるため、手を抜いてはいけません。
部活動や生徒会活動に力を入れる
勉強には直接関係ないため、評定平均とも無関係と思われがちですが、部活動や生徒会活動にも力を入れましょう。数字としては表れませんが、校内選考の際に同じ評定平均の希望者がいる場合、積極性が評価されて校内選考を通過できる可能性があるためです。
そもそも、高校は勉強するためだけの場所ではありません。部活動や生徒会活動、学校が力を入れている地域の行事やボランティアに積極的に参加することで、校内選考や入試の際に加点評価される可能性もあります。
欠席日数を少なくする
部活動・生徒会活動と同じく、欠席日数も指定校推薦の枠を勝ち取るためには非常に重要です。授業に参加していないと、授業に追いつけなくなって成績が低くなる可能性があるのも理由としてあります。それ以外には、同じ評定平均の生徒がいた場合、欠席日数が少ない人が校内選考で有利になるという傾向もあります。
つまり、評定平均という数字では表れないものの、欠席日数が少ない方が指定校推薦をもらえる確率が高くなるのです。無理をしてまで出席する必要はありませんが、指定校推薦で勝負したいのであれば、できるだけ学校を休まないことも大切です。
指定校推薦のメリット
指定校推薦には、他の入試制度にないメリットがいくつかあります。代表的なものは次の通りです。
- 合格できる可能性が高い
- 学力試験がない
- 偏差値以上の大学に合格できる可能性が高い
それぞれ詳細を見てみましょう。
合格できる可能性が高い
指定校推薦は、校内選考を通過できれば合格と言われるほど合格率が高い入試制度です。入試を受けた結果、落ちてしまった前例はいくつかあるものの、それでも少数派であることが殆どです。
例外として、医学部の指定校推薦があります。医学部は、指定校推薦でも3.0~4.0倍ほどの倍率があり、志望理由が不十分であったり、小論文が書けていなかったりすると不合格となる可能性があります。
それ以外の学部に関してはほぼ0%と言われるほど不合格者がいないのが指定校推薦の特徴です。校内選考を勝ち抜く必要はありますが、通過すればほぼ合格というのは間違いありません。
学力試験がない
指定校推薦の入試では小論文・面接・プレゼンテーションが課されることはありますが、学力試験が行われることはほぼありません。大学によっては学力テストが実施される場合もありますが、基礎的な内容を問う問題が多く、一般入試や指定校推薦以外の推薦入試よりは難易度が高くないと言われています。
そのため、学力に自信がない人でも、校内選考を通過すればあとは小論文や面接などの学力が直接問われない試験だけで合否判定が行われます。ただし、小論文も面接も練習は必須のため、受験すると決めたタイミングで課される内容を勉強するようにしてください。
偏差値以上の大学に合格できる可能性が高い
自身の偏差値以上の大学に合格できるかもしれないのが、指定校推薦を利用するメリットのひとつです。指定校推薦を受けるには、評定平均の基準と校内選考の通過という2つの厳しい関門をクリアしなければなりません。しかし、評定平均の基準がクリアできていれば出願できるチャンスが得られるため、偏差値では難しいとされている高校に合格できる可能性が出てくるのです。
もちろん、校内選考をクリアしたうえで入試を受ける必要はあります。それでも偏差値だけでは難しいとされている大学に挑戦できるのは、指定校推薦ならではのメリットと言えるでしょう。
指定校推薦のデメリット
一方で、指定校推薦を利用するうえで覚えておくべきデメリットもあります。具体的には次の3つです。
- 専願(他大学を受験できない)である
- 校内選考が厳しい場合がある
- 国公立大学は受験できない
出願する際には、これらのデメリットも理解したうえで受験するかどうかを決めるようにしましょう。
専願(他大学を受験できない)である
指定校推薦は、合格した場合に他大学を受験することができない専願制です。そもそも指定校推薦で設けられる定員は、大学側からすれば熱量の高い生徒に来てほしいと考えて設けられているものです。そのため、合格した場合はよほどの事情がない限り辞退することができません。
裏を返せば、志望している大学の指定校推薦枠があるのであれば、活用しない手はないでしょう。志望理由書の提出が求められるため、漠然とした理由のままでは合格できない可能性もあります。前提として、指定校推薦を利用するのであればその大学に絶対に行きたいという意志を固める必要があります。
ちなみに、指定校推薦で不合格であっても、一般入試やその他の入試方法での再受験は可能です。落ちてしまったからと言ってあきらめる必要はないでしょう。
校内選考が厳しい場合がある
指定校推薦の枠が人気の高い大学から高校に与えられている場合、校内選考が激化する可能性があります。大学や学部・学科によりますが、指定校推薦で設けられている募集人数は非常に少なく、多くても3人程度です。もし人気が高い大学が指定校の枠を高校に対して提示していると、このチャンスを逃すまいと多くの受験生が出願を希望するでしょう。その結果、校内選考では評定平均以外の要素で比較されることとなり、競争が激化するのです。
また、校内選考の基準は非公開となっているため、何をもって校内選考が通過できるのかが明確になっていません。高校によっては大学側から提示されている評定平均以外の評価が比較対象になっている可能性もあるため、注意が必要です。
国公立大学は受験できない
指定校推薦は、私立大学で活用されている入試方法であり、国公立大学ではほとんど採用されていません。一部の国公立大学では指定校推薦を実施している場合もありますが、その数は決して多くないのが現状です。
また、仮に国公立大学で指定校推薦の枠があったとしても人気が高いことが多いため、校内選考の時点で高い倍率を戦わなければならなくなるでしょう。基本的には少数派であるため、私立大学を受験するための方法のひとつとして指定校推薦を見ておくようにしてください。
指定校推薦の試験内容と対策
指定校推薦で課される試験は、大学によって異なります。ここではあくまでも一例ですが、指定校推薦の試験内容とその対策について解説します。
志望理由書
志望理由書は、どの大学でも求められる書類です。厳密には出願時に提出するためのもので、あとで紹介する面接・小論文とはタイミングが異なります。早い段階で用意する必要がある点に注意しておきましょう。
内容は大学によって指定されている場合が殆どですが、共通して問われる内容は以下の通りです。
- 大学を志望した理由
- 学びたい内容や大学生活で頑張りたいこと
- 将来の夢やビジョン
ポイントは積極性をアピールする内容にすることです。大学で学べることや特色を織り込むことで効果的になるため、志望理由書を書くうえで大学や学部・学科についても詳しく調べるようにしましょう。
面接
指定校推薦で実施される面接では、次のような質問をされることが多くあります。
- 志望理由
- 自己PR
- 入学後のビジョンややりたいこと
ポイントは、志望理由書の内容と面接で話す内容に違いがないかという点です。面接官は志望理由書を確認しながら面接の質問を投げかけてくることが多いため、志望理由書と面接での回答がちぐはぐになっていると面接官の評価が下がってしまいます。
面接練習の際は志望理由書のコピーなどを用意しておき、内容に沿った回答ができるようにしておきましょう。
小論文
指定校推薦の小論文は、他の推薦入試と同じ対策で対応できます。難しい試験のように聞こえますが、解答の仕方を知っていれば、過度に心配する必要はありません。ただし、学校の授業では扱わない内容であるため、独学や塾・予備校を活用した対策が必要です。普段書いている作文や感想文とは異なる解答方法になる点には注意しておきましょう。
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